6畳1間のあめ

ハンドボールとか音楽とか雑記とか。

風立ちぬ

 

 ジブリではない。ジブリでは、ジブリではないぞおおおおおお!

 

 堀辰夫『風立ちぬ』 を読みました。八王子南野のブックオフがGWセールをしていて、しかも100円コーナーにあったので運命と思い購入。堀辰夫は全く読んだことがなかったのですが、ジブリに取り上げられるくらいですから期待して読みました。

 

  「風立ちぬ、いざいきめやも」

 

 はい、もうね、いきなり出てしまいました。15行目にしてクライマックスレベルの名言です。ポール・ヴァレリーの詩『海辺の墓地』の一節“Le vent se lève, il faut tenter de vivre”を訳したもの云々で誤訳云々の話は置いておくにしても、たとえいざいきめやもの意味が分からなかったとしても、非常に語感が良く、キレのいい後味の一節だと感じるでしょう。 

 意味としては、「風が吹いた(ことを切っ掛けに)、生きていこう(と強く感じた)」といったところなんでしょうが、サナトリウム文学で非常に生き死にを強く感じる物語を考慮すると、「風が吹いたなぁ、生きていけるのだろうか不安である」といったところであろうか。軽井沢の森の中で感じる、季節の移ろいを感じさせる強い風、そして結核に侵され死ぬことが分かっている愛する人。美しい景観も、気持ちのよく晴れた日も、真の太いススキの野原も、全てがもの哀しさを後押しするために生の強さを感じさせるコントラストのように感じられます。

 

 その内容的な美しさは置いておくにして、堀辰夫の文章の美しさは是非1度手に取って感じてもらいたい。季節の移ろいをあんなにも流麗に表現できるのは、感動ですよ。