6畳1間のあめ

ハンドボールとか音楽とか雑記とか。

【読書】 羊と鋼の森 美しい文章と美しい表現。本だけど背中で語る

 

 いつぞやの本屋大賞を受賞した『羊と鋼の森』宮下奈都 を読みました。綺麗な表現をするなぁと思える本です。

 

 調律師を目指す主人公が、才能や努力といったことを考えながらコツコツコツコツと技術の向上を目指す話です。技術の向上を目指すと書きましたが、何を目的に(どういう音を出したくて)技術を向上させていくのかがはっきりしていません。職業人としての目標の持ち方も成長と共に分かっていきますので、職人仕事の難しさを教えてくれます。

 なんとなく燻る点もあるのですが、全編を通して美しい表現で多くの感情や気づきに説明がなされています。小さなことを掬う視点と端正な文章は非常に読みやすいです。

 ただ、主人公がどうしようもなくコミュ障なのかとんちきなのか職人堅気なのか、イマイチからっとしない思考や行動をします。それをすべて山深い集落で育ったからで片づけるのには問題があるし、場面転換も急だったりします。

 ラストは疾走感があり明るく開けていきますが、なんか突然悟りを開いちゃったのかしらって思うような急展開でもあります。 

 詩的な表現と働くことや悩むことなどいい点もあるが、本としての仕上がりはイマイチな部分がある。