なんとなく惹かれたので手に取った作品。
7月の雨降りが1週間も続いた日の昼間のようなぼんやりした小説。昔の文豪が搾り出して書いていたものを、鼻でもかむかのようにするっと書いた新時代の文学作品といえるのかもしれない。もちろん精緻な人間観察があっての納得感や、丁寧な描写によってありありと感じることができる非現実は作者のなせる技術だと思う。
短編集で軽やかな文体なのですらすらと読めます。(死後の話はありますが)重苦しい話もなく、「ちょっと休憩」といった読書におススメの1冊です。肩の力の抜きどころを分かっている主人公たちが、人生を流されていく様子には誰しも見習うところがあるかもしれません。