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6畳1間のあめ

ハンドボールとか音楽とか雑記とか。

ダンスミュージックの一部(Gassyoh / Dance Music )

音楽

 物事って、何でもいきなり、出し抜けに始まると思うんですね。


 夏の香りがかすかに鼻腔をくすぐり始める頃、Aは気の早い太陽の日差しを避けるように森の中にいた。鬱蒼とまではいかないが、木々の影がつくりだす空間は彼の心を爽やかにしてくれ、穏やかな風が彼の汗を優しく拭ってくれた。その人生と同じように目的なく漫然と歩みを進めていると、突然ひかりがたゆたうようためにできたかのような空間が――そこは金髪碧眼の少女がうさぎを狩るために穴に落ちる時代の絵本の世界のように、やけにファンタジーなぽっかりとした空間であった。
 
 「ジリッリリリリリリリリリリリリ」

 唐突にベルが鳴る。頭部がカメラの映画の盗撮を禁止することを訴える珍妙な男よろしく、頭部がスピーカーの男がベルを鳴らす。自身の頭部のスピーカーとは別に、やけに音の大きいベルを鳴らしている。10秒程なり続けたベルは唐突に止み、Aの脳みそ約1400gはごく平均的な成人男性の重量のそれであるが、平均的な成人男性が一生の間に処理する意図不明な情報量を十数秒の間に処理するために神経が熱暴走を起こす。太陽が燦々と輝く真昼だったはずなのに夜中の室内のような闇に覆われ、気持ちのよい暑さに取り巻かれていたはずなのに人で蒸したような熱気に包まれている。そして、中空にはミラーボール。


「死んだ魚のような魚の目をしたお兄さん、it's  party night!!」

  頭部スピーカー男は野太い声をそのスピーカーから発した。それと同時にダンスフロアーに鮮やかな光が飛び交う。ミラーボールが毒々しい光を反射しながら、回るまわる廻る周るマワル。

「スピーカーが2台あり、それなりに大きな音が鳴っているところで、ダンスミュージックは勝利できると、私は確信している」

 

 Gassyohのメロディックかつムーディーな音楽がフロアを躍らせる。Aも身体の髄から揺れ動く感覚に囚われ、何を考えるまでもなくダンスミュージックの一部になっていく。身体も自我も、そのまま溶けてなくなった。

 

 http://www.youtube.com/watch?v=kPljgnJanxI